甦えれ川崎580号<慰安婦問題問う映画「主戦場」川崎「しんゆり映画祭」で上映

甦れ川崎

川崎市麻生区で開催中の「KAWASAKIしんゆり映画祭」で慰安婦問題を追ったドキュメンタリー映画「主戦場」が11月4日上映されました。
川崎市が懸念を伝え一度は上映中止が決まった映画「主戦場」は、後押しする市民の力によって主催者が決断し、上映にこぎつけました。
今日の「甦えれ川崎」は映画「主戦場」を特集しました。
<はじめに>
「主戦場」をめぐっては、慰安婦問題を否定的にとらえる一部出演者が上映差し止めを求める訴訟を起こしたことを受け映画祭共催者の市が「訴訟になっている作品を上映するのはどうなのか」と主催者側に伝達しました。6月に決まった上映が9月に入り安全上の不安などを理由に中止となった経緯があります。主催者から連絡を受けたし市民文化振興室は「上映作品を選定するのは映画祭の側。市はこれまでも選定に意見を言ったことは無いし、今後も言うことはない」としました。
一部報道で事態が明らかになり、映画関係者らから「知る権利の放棄」「補助金をたてにした検閲だ」などの批判が噴出しました。映画製作会社「若松プロダクシション」が出品作品を取り下げて抗議を示し、「主戦場」のミキ・デザキ監督は「表現の自由を守るため、勇気ある決断を」と呼びかけていました。こうした声を受け、映画祭の中山周治代表は10月30日に開催した集会で「安全の問題がクリアできれば、上映を前向きに検討したい」とし、最終日の11月4日に上映しました。
<いよいよ上映にこぎつける>
最終公演で舞台あいさつに立ったミキ・デザキ監督は「表現の自由の大勝利。勝ち続ければトレンドになる」と力を込めました。
主催のNPO法人「KAWASAKIアーツ」の中山修二代表は「多方面から支援が寄せられた。上映実現の最大の要因は人」。開幕直前に上映中止が報じられた10月下旬以降、「スタッフ皆で一生懸命、表現の自由と向き合った」日々を振り返りました。
<上映を後押しにシンポジウム>
「主戦場」の上映中止問題をめぐり、映画祭会場近くの日本映画大学で4日、同映画の上映と公開講座、シンポジウムが開催され、約170人の学生、市民らが参加しました。
シンポジウムに出席したミキ・デザキ監督は「上映をするなとか映画を削除しろと言った圧力、威嚇に屈するという事は、戦うことなく検閲を容認するという事。政府が表現の自由を守らないときは、私たちが守っていかねばならない」と力説しました。
ジャーナリストで映画監督の綿井健陽さんは「今は政治家の圧力による検閲、助成金によるアンダーグラウンド検閲がある。今回はことなかれ検閲だ」と指摘しました。「極めて日本的で、何か圧力が来る前に自己検閲している」と川崎市による懸念伝達や映画祭の当初の中止判断を厳しくただしました。

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