甦えれ川崎598号<地域本位の分権型社会をつくる>

甦れ川崎

新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、都道府県知事の存在感が大きくなっています。地方自治とはどうあるべきか。民主党政権時には総務大臣も務めた、元鳥取県知事で早稲田大学教授の片山善博さんと枝野幸男代表が話し合いました。
司会進行は党自治制度調査会長の西村智奈美衆院議員が務めました。

 

<コロナ禍で見えた地方自治>
西村 今回、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、国と地方の役割分担のあり方についてあらためて考える機会となりました。
片山 今回のさまざまなやりとりを見て、地方自治が未熟だなと思い知らされました。第1次地方分権改革(1999年)により、国と地方が上下・主従から対等・協力の関係に変わり、「関与法定主義」と言いますが、要は国が自治体を従わせようと思ったら法律ないしそれに基づく政令の根拠が必要になりました。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法の執行において、国からの通知は助言の類ですから、本来それは聞いても良し、聞かなくても良し。その助言は従わなかったからといって不利益を与えてはいけないと法律に書いてあります。
それにもかかわらず、この原則を国も、当の地方も忘れている。このことにちょっと暗澹としました。緊急事態宣言を発するのは国の責任と権限で、それが発せられたら都道府県知事の権限行使に移る。国にあるのは「総合調整」機能で、それ以外に知事たちの権限行使に制約はない。小池さん(東京都知事)に至っては「社長かと思っていたら、中間管理職になったような感じ」だとぼやいていましたが、「あなたがそういう道を選んだのでしょ」と。あれが象徴的ですが、その他の知事さんたちも「国に協議せよ」との助言にみんな従いました。地方分権改革の成果に対する自覚が国にもないし、自治体側にも欠如している。情けないことです。
休業要請の解除、いわゆる「出口戦略」をめぐり大阪府の吉村知事が国に具体的な指標を示すよう求めたことから、西村経済再生担当大臣が「解除する基準は知事の説明責任だ」と応酬、あそこでようやく法律の解釈がほぐれたんですよ。そこで吉村さんは自分が中間管理職でないことに気が付いた。それがちょっとした希望ですね。

<政府の指示・要請は一貫して東京目線>
西村 本当の意味でリーダーシップを発揮するのであれば、もっと違ったやり方があってしかるべきだったと思いますが、代表から見ていかがですか
枝野 一貫して、コロナの話は都市部の視点に偏り過ぎています。人が密集しているところで感染が爆発的に拡大する。人口の少ない地域では事情が全く違うことは、多分最初から分っていたと思いますが、政府は東京の感覚で指示や要請をする。そこに対して今回「それはうちでは(事情が)違うよ」という声が上がらなかったことは、初めての事態とはいえ危惧すべきことではないかと思います。分権は制度論も大事ですが、同時に意識が変わらないと進みません。

 

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